さて、この記事をご覧の皆さんはランナーの方がほとんどだと思いますが、ランニングの目的が体脂肪減少などのダイエット目的という方も少なくはないと思います。
かく言う私がランニングを始めたきっかけもダイエットにありました(もう覚えていないほど昔の話ですが…)。
ランニングを始めたばかりの頃は『ただ走っていさえすれば体脂肪は落ちる』と思っていました。
ところが、実はランニングをただ漫然としているだけでは体脂肪というのはそう簡単に落ちるものではありません。
そこで、今回の記事ではランニングで効率的に体脂肪を落とすための方法を3つご紹介します。
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そもそもランニングの消費カロリーってどれくらい?
ダイエットのためにランニングを始めると最初はかなり肉体的にキツい時期が続きます。
これは、筋力や心肺機能が伴っていないためであり、実はキツさほどカロリーを消費しているわけではなかったりします。
一般的に、成人男性がマラソン(42.195㎞)を走った時の消費カロリーがおよそ2400kcalと言われています。
この値、みなさんは高いと思われるでしょうか?
成人男性の1日に必要とされる摂取カロリーが2300kcal前後と言われいているので、フルマラソンを一回走ると1日に必要なカロリー分くらいは消費するということになります。
こう見るとマラソンのカロリー消費は高いように感じますね。
ただ、体についた脂肪を1キログラム落とすために必要な消費エネルギーはおよそ9000kcalとも言われています。
人間は運動によるエネルギー消費以外に『基礎代謝』と呼ばれる、安静にしていても消費されるエネルギー(呼吸筋が使うエネルギーなど)があります。
この基礎代謝は成人男性で1500kcal前後と言われているので、もしもフルマラソンを走り切って(2400kcal消費)、一般的な成人男性の1日の必要摂取カロリー分の食事(2300kcal摂取)をしたとすると、1日で大体基礎代謝分(1500kcal)+100kcal分くらいのエネルギーの不足になると考えられます。
この不足分で私たちの体がやせるということになります。
さて、この不足分がすべて体の脂肪で補われればいいなと思うのですが現実はそう甘くありません。
それでは、私たちの体がエネルギー源としているのは何なのか見ていくことにしましょう。
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体がエネルギーとして使うもの
私たちがスポーツなどをするためのエネルギーは主に筋肉の中にあるミトコンドリアが作り出すことになりますが、そのエネルギー源となるものには以下の2つがあります。
- 糖分(グルコース)
- 脂肪(おもに遊離脂肪酸)
私たちが食事でとる栄養素にはたんぱく質・糖質・脂質・ミネラル…など様々なものがありますが、このうち運動などのエネルギーに使われる主なものが糖質と脂質になります。
それではこの2つはランニング中にどのように使われるのでしょうか。
ランニングにおける糖分の消費
ランニングを始めるとまず初めに消費されるのが糖(グルコース)になります。
残念ながら私たちのお腹などに蓄えられている脂肪は燃焼しづらく、ランニングの始めから簡単に燃えてはくれません。
一方で糖(グルコース)は非常に素早くエネルギーに変換することができ(代謝経路が比較的簡素)、ランニングの始めはもちろん、ランニングの途中で補給されたものもスムーズにエネルギーに変えて走ることができます。
ただ、糖(グルコース)は体の中に蓄えておける量が少なく、長距離のランニングではあっという間に枯渇してしまうという難点があります。
ランニングにおける脂質の消費
ランニングの始めに消費されるのが糖(グルコース)であることはお話ししました。
所説ありますが、脂質は大体20分以上ランニングを続けなくては燃焼が始まらないと言われています。
私たちが食事で体内に取り込んだ脂質は皮下脂肪または内臓脂肪の形で蓄えられることになります。
糖質と違うのが蓄えておける量がかなり多いということです。
糖質 | 脂質 | |
消費までの時間
|
ランニング開始時から
|
ランニング開始20分程度
|
1g当たりの産生エネルギー
|
4kcal
|
9kcal
|
上の表を見てください。
糖(グルコース)は即効性のあるエネルギー源で摂取すればすぐに力を発揮するものの、1g当たりのエネルギ―産生量は4kcalと少量なのに対し、脂肪は1g当たりのエネルギー産生量が9kcalと糖に比べると倍以上のエネルギー効率になります。
これは現代のような飽食の時代とは違い、野生に近い環境で生活し常に飢餓と隣り合わせだった時代の名残りで、蓄えられるときにエネルギー源を蓄え、エネルギーとして使う際はなるべく少量で大量の出力になるようになっていると言われています。
エネルギー効率がいいということはすなわち減らすのにも大量のエネルギーを必要とするということになります。
さらにランニングを含む有酸素運動ではまず初めに糖が消費されるので、脂肪を消費させることはかなり困難であるということがお分かりいただけるかと思います。
それでは燃焼させるのが困難な体脂肪をいかに効率よく燃やしていくのかという点について見ていきましょう。
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ランニングで効率的に体脂肪を燃焼する3つの方法
さて、ここまでランニングのカロリー消費・エネルギー源となる物質(糖・脂質)についてみてきました。
私たちがランニングをする目的の大きなウェイトと占める『体脂肪の燃焼』を効率的に行う方法はなんなのかという点をここではお話ししていきます。
効率的な体脂肪燃焼のためのポイントは以下の3つになります。
- ランニングをするタイミング
- ランニングの運動強度
- 活性酸素のケア
それではこの3点について具体的に見ていくことにしましょう。
ランニングをするタイミング
まずランニングをするタイミングですがこれはズバリ
『朝の食事前』
がベストになります。
この理由をお話しする前に食事とランニングの関係についてまずお話ししてみようと思います。
みなさんは食事のあと(すぐ)または空腹時どちらのタイミングでランニングをされているでしょうか。
食事で摂取した糖分は小腸から吸収され血流にのりますが、これに反応し、糖の分解吸収を促進する『インスリン』が分泌されることになります。
ランニングで消費されるエネルギー源には糖質と脂質があることはすでにご説明しましたが、この脂肪(中性脂肪)は体の脂肪細胞からグリセロールと遊離脂肪酸に分解されたのち血液に動員され、筋肉の中にあるミトコンドリアに運ばれ、エネルギーの本体とも言うべきATP(アデノシン3リン酸)という物質に変換されます。
インスリンが血中に大量に分泌されている状態では脂肪(中性脂肪)からグリセロール+遊離脂肪酸への分解が抑制されるため、ランニングによる脂肪の消費が抑制されてしまいます。
このため、体脂肪を効率よく燃焼させるためには食事のすぐ後にランニングをするよりも空腹時にランニングをするのがおすすめということになります。
それでは、食後どのくらい時間を空ければいいのかということになりますが、インスリンの分泌が落ちつく食後2時間~3時間後くらいがよいとされています。
ただ、インスリン分泌の経時変化は個人差が大きいものなので、この食後2~3時間というのは万人に当てはまるものではありません。
そこで、最後の食事から相当程度の時間が経過しておりインスリンの分泌も完全に落ちついていると考えられる『朝食前』が一番おすすめということになります。
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ランニングの運動強度
ランニングで効率的に体脂肪を燃やすためには運動強度にも気を付ける必要があります。
ズバリ結論から先に言うと
『ランニングの運動強度を最大酸素摂取量の25〜60%に抑える』
ことで効率的に体脂肪を燃焼することができます。
このままではわかりにくいので理由と、具体的な走りかたについてお話しします。
すでにお話しした通り、私たちの体が運動するために必要なエネルギーは筋肉の中のミトコンドリアによって作られます。
そしてこのミトコンドリアは糖質と脂質を使って最終的にどちらもATPというエネルギー源を作ることになるのですが、それぞれの物質の代謝経路(ATPが作られる経路)は異なります。
このうち脂肪からATPを作り出す過程では大量の酸素を使用することになるのですが、あまりにもランニングの運動強度が大きい場合は酸素が足りなくなりこの代謝経路がうまく回らずに脂肪の燃焼が妨げられてしまいます。
一方で糖の代謝には酸素を必要としないので、運動強度が高く酸素がうまく摂取されない場合、脂肪よりも糖を分解してエネルギーを作り出そうとすることになります。
そこで、運動強度をうまくコントロール必要があります。
運動強度をコントロールするうえで考慮すべきなのが『最大酸素摂取量(VO2Max)』になります。
詳しい説明は割愛しますが、最大酸素摂取量は運動時に体内に取り込むことのできる最大の酸素量になり、運動強度またはスタミナの指標になる値です。
この最大酸素摂取量を上回るような運動では酸素が足りない状態が続くために先ほど書いた理由から脂肪の燃焼が妨げられてしまいます。
最大酸素摂取量の計算方法には12分間で走れる(最大の)距離から算出するものがありますので以下に計算式を載せておきます。
VO2Max計算法
VO2Max= ([12分間で走行した距離(m)] – 504.9)÷44.73
計算式などを使えば厳密にどの程度の運動強度でランニングをすれば最も効率がよく体脂肪を燃焼することができるのかがわかります。
しかし、ランニング初心者の方にとってはこのような作業は面倒であると思いますので、簡易的にご説明すると
『ランニングをしながら会話ができる程度の運動強度』
これを目安にしてランニングをしてみるのがおすすめです。
会話ができるということは呼吸に余裕がある証拠ですので、ミトコンドリアによる酸素の利用もかなり余裕があるものになります。
具体的なスピードは個人差があるので何とも言えませんが、
ランニング中級者~上級者であれば大体時速10km(キロ6分)
くらいまでを目安に、
ランニング初心者であれば大体時速8km(キロ7分半)
くらいまでを目安に走るといいと思います。
このくらいのスピードであればほとんど息苦しさを感じないので無理なくランニングも可能です。
また、詳しく最大酸素摂取量を計測したうえできちんと運動強度を設定したいという方には計測機能付きのランニングウォッチを利用するというのもおすすめです。
私も実際に愛用しているランニングウォッチを最後にご紹介しておきます。
活性酸素のケア
私たちがランニングなどのスポーツをする際にエネルギーを作り出すのが筋肉の中にあるミトコンドリアであるということはすでにお話ししました。
このミトコンドリアが脂肪(正確には中性脂肪を分解して得られる遊離脂肪酸)を代謝してエネルギー源であるATPを作り出す過程で大量の酸素を必要とするのですが、この時使用した酸素の約5%が『活性酸素』と呼ばれる細胞を傷つける性質をもった物質に変化します。
この活性酸素はミトコンドリア自体にも大きなダメージを与えてしまうので、活性酸素のケアをしないとエネルギーを作り出す工場自体が壊れていってしまうことになります。
この活性酸素を除去する方法としては様々な方法がありますが、前に書いた記事の中にまとめてありますので興味のある方は是非ご覧になってみてください。
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まとめ
今回の記事ではランニングで効率的に体脂肪を燃焼させる方法に関連していろいろ書いてきましたがいかがでしたでしょうか。
私たちの見た目に大きくかかわってくる体脂肪はできれば全て取り去ってしまいたい!と思うのが人情で、効率的に減らしていきたいものですよね。
ただ、ここまで見てきた方はお分かりになると思いますが、脂肪は大変効率的にエネルギーを取り出すことができる物質なのでランニングにはなくてはならない物質であるともいえます。
ですので、あまり落としすぎると今度はランニング自体を楽しめなくなってしまうことにもなりかねなません。
なにごともほどほどにということで、これからも健康・安全にランニングを楽しんでくださいね。
それでは今回の記事はここで終了とさせていただきます。